2011年10月09日

山野酒造「片野桜」

 私の生まれた枚方市と隣接する交野市に「片野桜」という名酒がある。

 「またや見ん 交野の御野の桜狩り 花の雪散る春のあけぼの」と藤原俊成が詠んだ桜の名所交野の郷。

 生駒山系から流れ出す清冽な水、その流域に拡がる肥沃な土壌は見事な桜木を育み、そしてその桜の花の香りにも負けぬ芳香の美酒を生んだ。

 4〜5年前の秋、妻と交野の里に彼岸花を見に行った帰り、山野酒造に立ち寄った。

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 日曜日で蔵の門は閉まっていた。蔵の周りを巡り、その横の稲田を見て帰ろうとした。門の前に買い物帰りらしい車が近づき、中から蔵の主人らしき人が降りた。

 「大阪から『片野桜』を求めてきたんですが、お酒は売ってもらえないでしょうか?」

 主人に声を掛けた。

 「いいですよ。どうぞどうぞ」主人は気さくに答えてくれた。

 「蔵見学は今日は出来ませんが、日が決まっていますので、その時おいでください」そう言いながら主人は私達を事務所に案内した。

 幾本かの「片野桜」を差し出し、主人は私達の突然の来訪を厭うようでもなく丁寧に酒造りの話をされた。

 「また必ず蔵見学に来させてもらいます。休みの日なのに突然来てすみません。」

 買い求めた「片野桜」を抱えて蔵を出た。

 以前から「片野桜」は大好きな酒であったが、蔵の主人の心遣いに接し、ますます大ファンになった。

 行きつけのそば屋や居酒屋で「片野桜」を見つけると、まっ先に注文する。

 スッキリした口当たり。程よい甘みと酸味、そして桜の花の香りを思わせる芳香。

 口の中に含むとそれらが混然と溶け合い、芳醇な味わいとなって、のどの奥に拡がる。

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 ふっと心が和らぎ、至福の一時に浸る。

 心地よい酔いの中、交野の里で満開の桜を賞でながら「片野桜」を心ゆくまで味わって見たい。ふとそんなことを思い浮かべた。

posted by yoidore at 18:42| Comment(0) | 連載
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