2013年11月04日

「ならまちの地酒『春鹿』」 2013・10・14

妻が秋の遠足の下見で奈良公園に行くと言う。「近くに酒蔵があるなら一緒に行ってもいいで」「ならまち近くに『春鹿』の蔵がある」「よし、それなら行こう」
 10月半ば、3連休の中日、天気も良さそうだ。
 奈良公園は家族連れや若いカップル、外国人観光客で賑っていた。
 興福寺の南東にある浮見堂、東大寺、南大門東の広場、二ヶ所の下見をし、タクシーで「春鹿」の酒蔵・今西清兵衛商店に行く。
 蔵の隣に今西家書院がある。見学は後にして、先に酒蔵に行く。

春しか1.JPG

 中に入ると広い土間があり、十数人の客が試飲している。そばの椅子に座り、待っている人も数人いる。隅に受付があるので試飲を願い出た。
 「お一人400円です。しばらく待ってもらわなければなりませんがよろしいですか?」
 若い男性の店員が言う。
 待っている間、店内を見て回る。古い商家を改築し、高い天井に黒々とした太い棟木が貫いている。天井近くの壁に数々の賞状を収めた額が並び、その中央に鹿の首の剥製が飾られている。窓際には「春鹿」のいろいろな種類の酒瓶が並び、酒器や「春鹿」グッズの土産物がずらりと置かれている。

春しか2.JPG

 待っている間にも次々に何人かのグループが蔵を訪れる。和服姿の男女、外国人のカップル、結構若者が多い。
 ようやく試飲テーブルに呼ばれた。
 大きな酒樽のふたを半円形に切り、テーブルにしている。それらがぐるりと円形に並べられ、試飲カウンターになっている。中に若い女性店員が二人入り、周りの客に酒をつぐ。
 「今から5種類のお酒を飲んでもらいます」テーブルに1番目から5番目までの酒のラインナップを記したパネルが置かれてた。
 「『春鹿』といえばまずこれです」店員はそう言って「超辛口純米」を緑色の可愛いグラスについだ。これは居酒屋でよく見かける酒だ。スッキリとキレが良く、のどごしもいい。
 二番目は「純米吟醸・而(じ)妙(みょう)酒(しゅ)」。最高金賞の酒だという。やわらかい口当たりで香りもよい。ほのかな甘みが口の中に拡がる。「これは美味しい」超辛とは全然違う趣である。
 三番目に「極味(ごくみ)」という本醸造酒がつがれた。

春しか3.JPG

 「燗にすると旨味がでます。おでんやお鍋に合わせるといいと思います」店員の女性が説明する。グラスは小さいので二口ぐらいで飲んでしまう。隣は若い男女で、チケットは一人分だけである。女性がグラスの大半をグイッと飲み、残りを夫らしき男性がチビリと飲んでいる。
 「山廃純米生原酒・木(き)桶(おけ)仕込になります」四つ目の酒だ。「今までの中でこれが一番いい」私がメモをとっている間に妻はサッと飲み、つぶやいた。酸味と香りがあり、サラッとした味わいだ。
 「ワイン感覚のお酒です」店員が補足する。
 最後につがれたのは「純米吟醸生原酒」である。2012年銀賞受賞と説明パネルにある。「零下貯蔵で210日熟成したお酒です」店員が自慢気に述べる。フルーティな味わいで少々甘ったるい。「食前酒にいいかも」ぐいぐい飲める酒ではない。
 一通り酒を味わった後、蔵で作られた奈良漬が出された。途中で「アテに奈良漬を食べてもよろしいか?」と店員に言ったが「お酒の味が分からなくなるので、奈良漬は最後です」と言われていた。
 「おまけにスパークリングのお酒があります」店員がニッコリ笑いながらもう一杯ついでくれた。ピリピリとした口当たりで、シャンパンのようだ。
 「自然発酵のお酒です」
 「春鹿」にこれ程多くの種類の酒があるとは知らなかった。今まで少し米っぽい味の酒だというイメージがあったが、どれもそんなことはなく、結構美味しかった。
 「唎(き)き酒グラスはお持ち帰りください。」400円で6種類も飲ませてもらい、グラスがプレゼントにつくなら高くはない。十分満足した思いで4番目の山廃純米生原酒の四合瓶を土産に買い蔵を出た。
 相変わらず客は次々と訪れ、試飲カウンターに集まって来る。
 知る人ぞ知る酒通の「ならまち観光スポット」になっているようだ。
 帰りの電車の中で妻が試飲グラスを取り出し、しばらく眺めていたが突然つぶやいた。
 「グラスの底に鹿の絵が刻まれている」
 なかなか粋なことをする蔵だ。いい記念になったと思った。

春しか4.JPG

posted by yoidore at 11:13| Comment(1) | 連載
この記事へのコメント
先日、奈良で忘年会があり、春鹿と無上杯をいただきました。この他、春鹿では白滴も私のお好みです。
冷酒、たまりません!!

 PS 下市のエッセー、読ませていただ   きました。有難うございました。
Posted by 川上 めぐみ at 2013年12月17日 12:14
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