2014年08月14日

「秩父・武甲酒造」2014.4.1

東京の都心池袋から西武秩父線の特急で80分。渓谷沿いに電車は埼玉県の北西に拡がる山塊を目指して走る。山あいの盆地に古い歴史と文化に彩られた秩父の町並みがある。
町の南に標高1295mの武甲山がそびえ立つ。町の中央には創建2100年と関東でも屈指の歴史を誇る秩父神社の境内が拡がり、町の人々の信仰を集めている。江戸寛文年間から続く冬の秩父夜祭は打ち上げ花火も上がり豪華絢爛な祭りとして有名だ。
 秩父神社のすぐ近くに創業257年の歴史を持つ武甲酒造がある。
東京の大学に通う娘に会いに行った折、秩父に足を延ばし、武甲酒造を訪ねた。
前夜は新木鉱泉旅館という鄙びた温泉旅館に泊まり、朝一番に宿の送迎車で武甲酒造まで送ってもらった。まだ午前10時過ぎで、広い店内には誰もいない。
代々続いてきたと思われる薄暗い店内の天井には黒々とした太い棟木が幾本も走り、屋根を支えている。奥から店の主人が現れ、私達に応対してくださった。主人は話好きな方で、いろいろな種類の酒の造りについて説明を始めた。

武甲1.JPG

「どのお酒がいいとか美味しいということではなく、要するにそれぞれの料理に合った酒を飲むとよいということなのです」自分の持論を述べられた。
「わざわざ大阪からいらしたのだから、蔵の中にある井戸をお見せしましょう」店の奥に連なる広い蔵の中へと私達を案内してくださった。
「武甲山の伏流水が今も湧き出ています。平成の名水百選にも選ばれた水です」
井戸の中を覗くとかなり深い所に滾々と地下水が湧き出ているのが見えた。

武甲2.JPG


「蔵の創業は江戸の中期、宝歴3年(1753)です。現在の蔵は八代目が建てたものが、そのまま残っています。店舗の建物はさらに古く、七代目からのものです」
もう一度店内に戻り、上を見上げた。高い天井には「武甲」と金文字で書かれた大きな看板や、昔酒造りに使ったと思われる、水を汲み上げる滑車のようなものが飾られていた。
土産に買う酒を主人の説明を聞きながら選んだ。
「『武甲正宗』というのが代々造られてきた酒です。今はいろいろの造りでそれぞれ名前を付けています」
「昨日の夜、旅館の部屋で飲んだ酒が美味しかったです」。妻が西武秩父駅のそばにある酒屋で「武甲酒造」の二合瓶を買っていた。その「花ちちぶ」という純米生酒を妻は覚えていて、店内の棚から持って来てくれた。 
「私はこれにする」。妻が選んだのは特別純米無濾過生原酒「のんべえ」という自分に似つかわしい名前の酒だった。
ご主人にお礼を言い店を出た。
道路を渡り、蔵全体を撮影する。
秩父往還に建つ幾棟かの黒壁塗りの建物の中でも、武甲酒造は一際異彩を放ち、遠くに見える武甲山に対峙するかのように堂々とした構えで建っていた。
武甲3.JPG
posted by yoidore at 12:31| Comment(0) | 連載